経皮的僧帽弁接合不全修復システムMitraClip

治療実績52

2021.6.28現在

岸和田徳洲会病院だからこそできる、高度な治療

岸和田徳洲会病院だからこそできる、高度な治療

岸和田徳洲会病院は、「生命だけは平等だ」の理念のもと、救急医療から高度先端医療まで網羅する総合病院として発展して参りました。
心臓弁膜症治療においても早期より低侵襲カテーテル治療を導入しており、専門的な技術や知識を持つハートチームのもと、1僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療(マイトラクリップ)を行っています。

僧帽弁閉鎖不全症とは

僧帽弁閉鎖不全症とは

心臓は血液を全身に送るポンプとして働きますが、内部は4つの部屋に分かれています。
各部屋の間には血液が逆流しないよう弁と呼ばれる扉がついており、合計で4つの弁が存在します。
このうち、肺で酸素化された血液が戻ってくる左心房と、全身に血液を送るポンプの役割をしている左心室との間にある弁を僧帽弁と呼びます。

僧帽弁閉鎖不全症とは、僧帽弁が様々な原因によりしっかりと閉じなくなり血液が左心室から左心房に逆流するようになる病気です。 程度が強くなると心臓から血液をうまく送り出せなくなるため、息切れや動悸、むくみといった心不全症状が出現するようになり、命に関わる危険性もあります。

僧帽弁閉鎖不全症は原因により以下の2種類に分類され、
どちらもMitraClip治療の対象となります。

器質性(一次性)僧帽弁閉鎖不全症

弁尖や腱索(弁を左心室の乳頭筋に繋いでいる)の異常により弁が閉じ合わなくなり、逆流を生じることをいいます。

器質性(一次性)僧帽弁閉鎖不全症:腱索断裂による逆流

機能性(二次性)僧帽弁閉鎖不全症

何らかの原因により左心室、あるいは左心房が拡大し、弁がしっかりと合わなくなり、逆流を生じることをいいます。

機能性(二次性)僧帽弁閉鎖不全症:左室拡大に伴うデザリングによる逆流

MitraClipとは

MitraClip治療では、足の付け根にある大腿静脈からカテーテルを挿入し、MitraClip®(マイトラクリップ)を心臓内へと導入します。心臓内でクリップを開き、クリップで僧帽弁を掴んで引き合わせることにより僧帽弁がしっかりと閉じるようになり逆流を減らすことができます。
2018年4月より国内で保険適用となった治療法であり、すでに世界でも100,000例・本邦でも3,000例を超える治療が行われています。

MitraClipは全身麻酔下に行います。カテーテルを体内に挿入してから、クリップを留置しカテーテルを抜去するまでは約2時間程度となり、傷としては右大腿部に3mm程度の傷ができるだけ非常に低侵襲に治療を行うことができます。

MitraCrip治療の流れ

機能性(二次性)僧帽弁閉鎖不全症

大腿静脈からカテーテルを挿入し、
クリップを心臓内まで進めます。

機能性(二次性)僧帽弁閉鎖不全症
機能性(二次性)僧帽弁閉鎖不全症

心臓内(左心房内)でクリップを開き、
僧帽弁の閉じが悪い部分をクリップで掴みます。

機能性(二次性)僧帽弁閉鎖不全症

クリップ留置により弁がしっかり閉じるようになり逆流が減少します。

治療アニメーション動画

治療適応について

僧帽弁閉鎖不全症の程度について、心エコー検査にて評価を行います。
軽度〜中等度で自覚症状がない場合には、薬物治療にて経過観察を行うこととなります。

症状を伴う重度僧帽弁閉鎖不全症については、その原因が器質性であれば外科手術が第一選択となります。
ただし、外科手術の危険性が高い、あるいは向いていないと判断される器質性MRの患者様に対しては、MitraClipでの治療が適応となります。
(具体的には、非常に高齢である・心臓手術の既往がある・心機能が悪い・悪性腫瘍の合併がある・免疫不全状態にある・脆弱である 等の場合にMitraClipが考慮されます。)

一方の機能性僧帽弁閉鎖不全症に対しては、十分な薬物治療をおこなっても症状(息切れやむくみなどの心不全症状)が残存する場合、MitraClipでの治療が適応となります。

いずれのタイプでも、心エコー検査での僧帽弁の形態も踏まえて、最終的には循環器内科・心臓血管外科が協力した当院ハートチームで協議を行い、治療方針について決定します。

MitraClipのメリット

1患者さんの身体への負担が少ない

カテーテルで治療をおこなうことにより、右足の付け根の部分(鼠経部)に3㎜程度の傷ができるだけですみ、術後の疼通や出血といった負担が極めて少なくなります。通常の経過では、術後当日の夕から食事再開となり翌日から歩行が可能です。

2外科手術が不可能、あるいは手術リスクが高い患者さんに対しても治療が可能

非常に高齢である・心臓手術の既往がある・心機能が悪い・重度の肺疾患がある・悪性腫瘍の合併がある・免疫不全状態にある・脆弱である 等の原因により従来の心臓手術が受けられなかった患者さんに対しても、治療が可能です。

3入院期間が短い

身体への負担が少なく治療を行えることで、早期に退院が可能です。
(通常の経過では合計8日間の入院となります。心不全の状態によっては延長を要す可能性があります。)

担当医紹介

循環器内科 医師

桑原 謙典

循環器内科 医師 桑原 謙典

経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)指導医
(バルーン拡張型人工弁 Sapien・自己拡張型人工弁 CoreValve)
循環器内科専門医
医学博士

━ 略歴
  • 学歴
  • 2008年 京都府立医科大学 卒業
  • 主な職歴
  • 2008年 沖縄県立中部病院 初期臨床研修
  • 2010年 沖縄県立中部病院 循環器内科
  • 2012年 沖縄県立八重山病院 循環器内科
  • 2013年 関西電力病院 循環器内科
  • 2014年 仙台厚生病院心臓血管センター 循環器内科
  • 2016年 京都府立医科大学大学院医学研究科 循環器内科
  • 2020年 岸和田徳洲会病院 循環器内科
━ 学会・資格など
  • 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)指導医(バルーン拡張型人工弁 Sapien)
  • 経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)指導医(自己拡張型人工弁 CoreValve)
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本循環器学会循環器専門医
  • CVIT認定医

弁膜症で悩まれる患者さんの
お力になりたい

これまで仙台厚生病院・京都府立医科大学附属病院にて弁膜症カテーテル治療の経験を積んできました。
大動脈弁に対するカテーテル治療(TAVI)・僧帽弁に対するカテーテル治療(MitraClip)・経皮的左心耳閉鎖術(WATCHMAN)を担当しており、弁膜症で悩まれる患者さんのお力になれるように当院ハートチームと共に全力を尽くして治療を行います。

お悩みの患者さんがいらっしゃいましたら、お気軽に当院へとお問い合わせください。

弁膜症で悩まれる患者さんのお力になりたい
弁膜症で悩まれる患者さんのお力になりたい
弁膜症で悩まれる患者さんのお力になりたい

Q and A

適応判断に要する検査・期間はどれくらいになりますか?

薬物治療で改善できるところがないかどうかをチェックし、まず薬物治療を最適化します。
その上でも有意な僧帽弁閉鎖不全症が残存すれば、外来で経胸壁心エコー・経食道心エコーを行い僧帽弁閉鎖不全症の原因・状態について評価を行います。 冠動脈疾患合併の有無についても、必要時心臓CTでの評価を追加します。基本的にはほとんどの必要検査を外来で終えることが可能であり、1〜2週間程度で適応判断が可能です。

MitraClip治療の入院期間はどれくらいになりますか?

通常の経過であれば、合計8日間(MitraClip後、5日目に退院)の入院となります。

転院してのMitraClip治療は可能ですか?

転院したうえで、心不全加療・MitraClip術前検査・適応判断を行うことも可能です。

心房細動などが関与した弁輪拡大による心房性機能性僧帽弁閉鎖不全症は治療可能ですか?

難易度はやや上がりますが、MitraClipで治療が可能です。

透析患者さんでも治療適応となりますか?

透析患者さんでもMitraClipでの治療が可能です。

MitraClipが不可能な弁の形態はどのようなものですか?

弁口面積が小さくMitraClipにより僧帽弁狭窄症を来す可能性がある場合・弁尖の石灰化が強くMitraClipにより僧帽弁の損傷を来す可能性が高い場合・後尖長が短かったりテザリングが強く、MitraClipでの把持が困難な場合には、MitraClipが不適となることがあります。

初回の心不全入院でも適応となりますか?

器質性(一次性)僧帽弁閉鎖不全症の場合には、初回入院でもMitraClipの適応となると考えられます。
機能性(二次性)僧帽弁閉鎖不全症の場合は、まず薬物治療の最適化を行います。

入院はしたことがないが、労作時の息切れがある場合は適応となりますか?

入院歴がなくても、僧帽弁閉鎖不全症による症状がある場合には治療対象となります。

うっ血性心不全急性期には重度の僧帽弁閉鎖不全を呈するが、治療後は中等度未満まで軽減する場合は?

十分な薬物治療後も、同じように心不全入院を繰り返す場合はMitraClipのよい適応となります。

十分な体力のある若い方がMitraClipを希望された場合、治療は可能ですか?

MitraClipは、高齢であったりその他の疾患のため外科手術のリスクが高い患者さんや、高度の心機能低下を伴う患者さんが対象の治療方法です。僧帽弁閉鎖不全症の治療の基本は外科手術であるため、若くて体力のある方には外科手術をお勧めします。

MitraClipの適応に悩んでいらっしゃる地域の先生方へ

僧帽弁閉鎖不全症にてお悩みの患者さんがいらっしゃれば、お気軽にご連絡ください。
当院で心エコーを含めた必要検査を行い、患者さんに最適な治療方針につき提案させていただきます。
現時点で治療適応とならない場合でも、当院で定期フォローを行い
治療のタイミングを逃さないように対応させていただきます。

遠方で受診が難しい患者さんの場合には、紹介状と心エコー画像があればMitraClipの適応について
大まかな情報をお伝えすることも可能ですので、下記連絡先へとお気軽にご相談ください。